はじめに
ここ数年流行った売買手法に、 転売業者による三為(さんため、サンタメ)取引というものがあります。 三為契約ともよく呼ばれます。 今回はその仕組みと注意点について解説します。
三為取引ってなに?
三為取引は、一言で言ってしまえば「転売の一手法」なのですが、 まず、この取引手法がうまれた背景から解説します。
その昔、不動産を買って転売する業者は、 「中間省略」という手法を用いることがありました。 これは、売主から物件を買う際に自身は登記せず、 買主へ直接登記を移転するというものでした。 これにより、業者は取得税や登記費用を節約することができます。
しかし、これが法改正によって不可能となったため、 「新・中間省略」と呼ばれる新しい手法が開発(?)されました。 これが俗に言う「三為取引」というものです。
三為取引では、 売主から転売業者へは、「第三者のためにする売買契約」(三為契約)を結び、 転売業者から買主へは、「他人物売買契約」を結びます。 こうして契約を2種類に分けることにより、 中間省略が可能となるのです。
図解すると以下のようになります。
また、このような手法で転売を行う業者を俗に「三為業者」と呼びます。
三為取引による高値転売
さて、ここからが本題です。 三為取引そのものは特に違法ではないのですが、 この取引には ダークな一面 があります(苦笑
それは、 売主の出している価格が、買主からは見えない という点です。 転売業者はこれを利用し、高値転売を行うわけです。
例えば、図中の価格のように、 売主から転売業者へは8000万で契約し、 転売業者から買主へは1億で契約するのです。
こうすることで、 転売業者は物件を転がすだけで2000万の利益 を手にすることができます。
まぁ、通常の転売でも元の売価は買主からは分からないわけですが、 良心的な(?)転売業者の場合、一旦自社で購入したのち、 大規模修繕やリノベーションを行ったり客付けを行ったりして、 物件の抱える問題をある程度解決してから、相応の利益を乗せて転売するわけです。 しかし、三為業者はほとんど何もせずに物件を右から左へ流しているだけなので、 やっていることは通常の仲介とほとんど変わりません。
普通に仲介した場合、物件が1億なら片手で300万、両手で600万の仲介手数料ですが、 三為取引にすることで、その何倍もの利益を得ることができるのです。
もちろんその分、 買主は割高な物件をつかまされる ことになります。 例えばこれが家賃年収800万で利回り10%の物件なら、 三為業者を通すことで利回り8%に劣化するわけです。
もし、本来の売価が8000万であると買主が事前に知ることができるなら、 1億では絶対に買わないでしょう。 2000万円も上乗せされた割高な物件にしか見えないからです。
しかし、元の8000万という価格が見えず、 最初から1億という価格を提示されていれば、 「いい物件ですよ」などと業者に言いくるめられたりして、 普通に購入してしまうわけです。
多少の家賃保証をつける三為業者もいるようですが、 そんなものは高値転売の利ざやのなかに織り込み済みですし、 転売益に比べれば微々たるものです。 保証期間が切れればサヨウナラ、というわけです。
特に、融資のゆるい時期は要注意です。 割高な物件でも、属性がある程度よければ融資がついてしまいます。 融資がゆるいと転売価格をより割高に設定できるので、 転売業者にとってはボロ儲けのチャンスです。
ここに、三為取引の闇があるわけです。。。
三為取引にウラ法人を組み合わせ…
三為取引による高値転売を、ウラ法人、 いわゆる「一物件一法人一金融機関」のスキーム(笑)と組み合わせると、 かなり極悪なことになります(^_^;
仮に、転売業者が三為取引をウラ法人の手法で10回行った場合、 図の例でいけば2000万×10で2億円のもうけになるわけです。
買主は割高な物件を10コつかまされ、 表面上は「メガ大家」になって喜んだのも束の間、 家賃保証が切れれば破綻必至、という笑えない状況に陥ります。
破綻しても、もちろん転売業者は責任を取りません。 「投資はお客様の自己責任ですから」で終わりです。
自分の身は自分で守る
もし、物件を買うにあたって、 契約書が売主との売買契約ではなく、 業者との他人物売買契約である場合、 割高な三為取引である可能性が高いので、 警戒レベルを一気に引き上げましょう。
またそもそも普通に収支計算ができる投資家なら、物件を買う前に 「この価格で買って投資として成り立つかどうか?」という判断を必ずする はずなので、三為取引云々以前にそんな割高な物件は買わないでしょう。
近年話題となった「かぼちゃの馬車」問題では、 シェアハウスがものすごく割高な物件価格で投資家に売られていましたが、 これも三為取引に類するスキームが使われていたそうです。
昔からある新築ワンルーム区分投資から、かぼちゃ問題まで、 結局、自分で収支計算しない人がカモとして引っかかってしまうわけです。 当然、収支以外にも検討すべき事項は色々とあるわけですが、 収支計算は基本中の基本であり、これができない状態で不動産投資をするのは、 ドラクエで言えば何も装備せずにLv1で荒野へ旅立つようなものです。
このようなダークな転売手法があることを知っておき、 またいついかなる時も収支計算をきちんとすることで、 自分の身を守っていきましょう。
まとめ
- 三為取引とは、税金の節約を目的とした中間省略の一手法
- 買主から本来の売価が見えないのをいいことに、高値転売が横行
- 割高な物件をつかまされないように注意しよう